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2007年3月15日 (木)

憧れの人

「友達を見つけた」

確かこんな書き出しだった。彼女が書いた梶井 基次郎の「檸檬」の読書感想文のことである。なぜ私が彼女の読書感想文を読むことができたのかというと、彼女の読書感想文が賞をとったため、高校の広報誌に掲載されていたからだ。私は物持ちが非常に悪い(しかも、「捨てる技術」に中途半端にかぶれたため、大事なものをかなり捨ててしまった)ため手元に残っていないが、とても繊細で美しい文章だったように思う。しかも、選んだ作品が梶井 基次郎の「檸檬」。高校生の私には読みやすくて面白い短編でしかなかった。檸檬の色や形、香りに心を動かされ、それを爆弾に見立てて本屋に置いてくる病がちな青年は、面白い発想をする人だと思っても、私には友達だと思えなかった。

私は理系クラスにいたため、彼女との接点はほとんどなかったはずだが、何かをきっかけに不意に親しくなった。実物の彼女は文章以上に繊細な印象を与える人だった。色白で、華奢な、かわいらしい人だった。親しくなったといっても、朝礼や集会の帰りに待ち合わせをして、講堂から教室まで一緒に帰ったり、何かの空き時間に偶然彼女を見つけた時に一緒に過ごしたり、といった程度。憧れの人だったはずなのに、何を話していたのかを全く覚えていない。ただ、心の中が温まるような美しい時間が流れていたように思う。

高校卒業後、彼女は有名な女子大に進学し、私は私のガサツなイメージにぴったりな理系の大学に進学した。その後、年賀状を1,2度やり取りしただけで、親交は途絶えた。彼女が今どうしているのかわからないが、おそらく幸せで穏やかな人生を送っていることだと思う。そして、30歳を過ぎた今も美しい人のままであると思うし、そう願う。思春期というのは不安定で、憂鬱で、あの時期には決して戻りたくないと思うが、彼女と過ごした時間は、私の思春期の中でも美しい時間の一つだと思う。

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