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2008年11月18日 (火)

闇の中

 暗闇が好きだ。暗闇の中にいると、自分の体の境界線がわからなくなる。視覚が失われると、外部から得られる情報は極端に少なくなる。それが面白くて、暗闇の中に身を任せるのが好きだ。

 子どもの頃、ドラえもんの真似をして、押し入れで寝てみたことがある。びっくりするぐらい朝の光が差し込まなくて、いつまでも暗いままだった。

 京都の北山の家に住んでいた頃、茶室住宅もよかったが、何よりも暗闇がよかった。特に月の出ていない闇夜は、鬼が出るかと思う程暗かった。あの家で暗闇の中ぼーっとしていると、風が落ち葉を揺らす音が物の怪の気配を帯びてきて、なかなか不気味でよかった。

 佐用の夜もよかった。佐用は星が見えることをウリにしているので、街灯は光が空に漏れないように工夫されている。おかげで、車の中で隣に座っている人の顔もわからない。喋っていないと、隣に座っていた友人が闇に溶けていったのではないかと思う。

 先日行った福知山線廃線跡のトンネルも素晴らしかった。私達は懐中電灯をすっかり忘れていたので、真っ暗闇の中をとぼとぼと歩かなければならなかった。あまりにも真っ暗で、暗闇の中から薄くぼんやりと光る出口を見つけると嬉しくてたまらなくなった。足下は枕木で凸凹しているし、転んだり落とし物をしたらおしまいだな、と思いながらも非日常的で面白い経験だった。

 暗闇は都会では贅沢品だ。街の灯りはいつまでもコウコウと灯っている。なかなか風情のある暗闇に出会えない。

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