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2009年2月27日 (金)

ドボジョの生きる道

 構造計算もできない、流体力学もわからない、土質力学もわからない。クリープと聞いても「コンクリートが変形する現象」じゃなくて「コーヒーに入れる白い粉」としか思わない、そんな私でも、土木に対して愛着がある。

 だから、2月号の土木学会誌*には泣けた。「女子学生の気持ち」というタイトルで、ゼネコンでバリバリ働くすごくえらい女性の方がエッセイを寄稿されていて、次のような文章があった。

>仕事を続けたいと思うことと、結婚や子供を対立するものと漠然と不安に感じていた。周囲に不安を気づかれるのが怖くて、女の子の淡い夢は胸の奥にしまいこみ、「結婚はしない」とだけ両親に宣言してきた。(土木学会誌,vol.94,no.2, 2009)

 この方は、この宣言どおりではなく、結婚して子どもも産んで、バリバリやってらっしゃるのだけれども、この仕事と家庭の両立に対する切ない意気込みに泣けてくる。

 ドボジョ(土木学科にいる女学生たち)は、就職が始まる三年生ぐらいの頃に、先生方に「女子は公務員試験を受けなさい。一般企業に女子の居場所は無い」とさっくり言われたりするのよ。高校まで男女平等は当たり前でやってきたのに、大学に入って目の当たりにする男女差別。夢も希望も打ち砕かれるような気持ちになる。空気を読めちゃう賢い女子学生たちは、さくさくと公務員試験の勉強をして、公務員になっていく(公務員は面白い仕事ができると思うけれど、待遇だけにひかれて公務員になるのはどうかと思う)。

 少し前に、優秀な成績を修めている女子学生からこんな相談も受けた**。「卒業後すぐに結婚する予定なのだが、家庭と仕事が両立できなさそうなので、仕事はあきらめようかと思っている」。本当にもったいない。いっそのこと、仕事内容に魅力が無いからという理由の方がいい。「両立できなさそう」って、部活と勉強で悩む中学生みたいな理由で、仕事をあきらめるのがつまらない。

 私たちの世代は、家に母がいるのが当たり前として育ってきたし、少し下の世代もそれほど状況は変わらない。だから、家庭と仕事を両立させるモデルがうまく見つからなくて、二の足を踏んでいる。新聞やテレビ等のマスメディアで取り上げられる女性達は、ものすごく頑張っている人たちだ。しかも今は不況なので、会社のために身を粉にして働く人間以外は受け入れてもらえないんじゃないか、という感じもする。で、結婚相手は身を粉にして、そこそこの給料を稼いでくる。そうなると、無理してまで仕事をする意義が見つからない。空気がよめちゃう賢い女子学生がそう思うのも無理もない。

 でも、そこはあえて空気をよまないでほしい。「女性は育休とかがあって迷惑」「ダンナさんの給料で食べさせてもらえばいい」という空気をよまないで、自分がやりたいことをやるべきだ。空気をよんで、それに合わせて行動するのは場を乱さないために大事なことかもしれないけれど、そのやり方ではみんなが幸せになれない。自分がやりたいことをやると決めたうえで、家庭生活をどうやって維持するのかという対策を考えればいい。育児に関しては、周りの助けを借りた方がよい場合も多いし。

 一人一人の女性技術者が仕事を辞めないということは、本人にも後輩にも意味があることだと思う。私も含めて今働いている人やこれから働こうとしている女性土木技術者は、公務員だけでなくいろんな働き方もあるということを、後輩たちに見せる役割もある。会社という組織に固執しないというやり方もあるし、細々と続けることも大事。仕事を続けるためには家庭生活はあきらめよう、なんていう切ない思いを持たなくても、もっと気軽に土木の女子学生が土木の仕事***に入っていくようになったらいいと思う。

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*土木学会誌は、土木学会員に対して毎月送られてくる優良な土木業界誌。学会誌なので少しキレイゴトすぎるきらいはあるものの、美しい写真を表紙に使ったり、旬なネタを扱ったりしていて、読みどころ満点。これを購読できるなら、会費もそれほど無駄でもないかと思う。ただ、うちの家はオットも会員なので、学会誌は2冊もいらない。会費を一人半額にして、学会誌も1冊にしてもらえるとうれしいのだけど。
**彼女には「仕事をする/しないの二分法ではなく、細々と仕事を続ける道を探ってはどうか」というアドバイスをした。最終的に彼女は非常勤の研究員の職を見つけたようだ。ひとまず、よかった。
***土木の仕事って何?て聞かれるとすごく困る。ゼネコンやコンサルタント、行政に入って、道路や橋、下水道、鉄道を作るだけが土木じゃない。公共の福祉に関わる仕事、公共事業に代表されるような狭い意味の公共じゃなくて、広い意味の公共の仕事。そんなこというと何でもかんでも土木だ、定義付けの意味がなくなってしまう。でも、広い意味でとらえておいた方が、語源の「築土構木」の意味に近いし、もっと柔軟性が増すはず。

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コメント

社会的な枠組みの中での「女子」は大変だなあと僕も思います。
なにより男子とも働かなければいけないというのがもっと大変です。
できればハタラキタクナイですねえ。

築土構木、良い言葉をありがとうござんす。
懐かしいです。
土木といえば利権の象徴のように言われるのですが
本来幅広ですよね(権力とは切れない縁のものですが)

高知での土木系。
牧野富太郎記念館がとても良い場所に変化しています。
内藤氏の技あり一本!てとこです。
建築だけではあんな風に時間と場所を想像しえなかったと思います。広義の土木の勝利ですな。
建築では作品になるのが
土木では作品にならない、、ってとこが味噌です。

投稿: 八 | 2009年2月27日 (金) 21時06分

>八さん
こんにちは。ようこそです。

私もできればハタラキタクナイですけれど(何せ高学歴ニートまっしぐらですから)。
でも、専業主婦は精神的に結構きついと思うのですよね。
だから、仕事を続ける道を探ったほうがいいかな、と。
で、男子と同様に働きたい人はバリバリ働いてもいいし、もう少しゆっくり自分のペースで働いてもいい、というようになったらいいのに、と思っています。

英語のCivil engineeringも土木の本質を表しているようで好きなのですが、築土構木の方が生活の基盤を作っている、という感じがして好きです。
でも土木という言葉は最近嫌われていて、あちこちの大学で「社会基盤工学科」とか「社会環境工学科」という名前に変わったりしています。
もともと境界があいまいな分野なのに、ものすごく狭く捉えられている気がしてもったいないです。

牧野富太郎記念館、土木学会デザイン賞とってますね。
http://www.jsce.or.jp/committee/lsd/prize/2006/works/2006g2.html
ここ↑の講評に、「斜面にへばりつくように」「外見的美しさを誇示するのではなく」という言葉があるのが面白いです。
写真だけ見てもすごく良い空間なので、行ってみたくなりました。

投稿: ぴか | 2009年2月28日 (土) 09時38分

あちゃ。
自分のコメント読んでひどい文章だなと。
ごめんなし・
>なにより男子とも働かなければいけないというのがもっと大変です。
は男子と一緒にではなく
男女関係なく迫り来る労働のチカラというか、
労働しなければならない、はたらかなければならない、シューショクしなければならない、、、、
なんていう知らず知らずのうちに自律的に仕込まれた、
「社会」で働くことへのソフトな強迫観念(長い!!)
が大変だなあと思うのであります。
誤解を生む文でごめんなさい。
女性の立場はそれなりに理解しておるつもりですが。

>もともと境界があいまいな分野なのに

には大賛成。
土木といえば政治性をもった陸路の整備や
おおがかりな河川改修など、「大きい」土木として語られてしまいがちですが、
そこらへんのじいちゃんが自分で段差をつまづかないように道をなおしたり、田圃のちょこっとした水引きを改善したり、土留めをつくったり、小さい「土木」もありと思うんですけど
拾われないのですねえ、これが。

牧野は完成した当時はなんだこれってな感じの箱でしたが
時間がたてばたつほど人を引き寄せ、ステキなイベントが自然発生的に涌いてくるような「場所」になりました。

お子さんが川で泳ぐのが楽しい!てな頃になったらご家族でゆっくり遊びに来てください。
ツアー組みますけん!!

投稿: 八 | 2009年2月28日 (土) 21時41分

>八さん
あら。また、返事がすれ違ってしまって、ごめんなさい。
どうも私は読解力が足りないですね。誤読しまくり。
組織に所属しないで「ハタラク」やり方もあると思うのですけれど。
返事が難しいなー。
自分自身、ハタライテイナイ時、ものすごく鬱になったので、外とのつながりを持っておいた方がよいと思っているのです。

小さい「土木」、いい言葉ですね。
子どもが触って汚れないようにガードレールを拭くとか、土嚢で簡易に道を整備するとか、そういうのも「土木」の範疇だと思うんですよね。
バス計画も、地元の人に路線やダイヤを組んでもらうと、専門家がつくるのと変わらないものができたりします。
地元の人が自分で作ったということとか、計画を作る課程とかが大事なんじゃないかと最近思っています。自分たちで作っているのであれば、修正も簡単にできますし。

南風耕作堂ツアー、ぜひ行きたいです!!

投稿: ぴか | 2009年3月 1日 (日) 08時20分

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