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2009年8月 5日 (水)

アンドロイドは電子オルガンの夢を見るか

 子供の頃、エレクトーン*の県大会に一度だけ出たことがある。

 それまで特に目的もなく、かなり気軽な感じでエレクトーンを習っていた。クラシックよりもポピュラー音楽や歌謡曲を中心に弾いていたので、私にとってエレクトーンは遊びの一種だった。そんな私だったが、小学校5年生の時に先生のすすめでYAMAHAの大会に出ることになった。弾いた曲は「幻想曲さくらさくら」というピアノ曲のエレクトーンアレンジ。当時の我が家にはゲーム機器もパソコンもなく、他にするべきことがなかったので、結構熱心に練習した。そうしたら、地区の大会で優秀賞をいただいて、県大会に出場できることになったのだ。 

 で、せっかく出ることができたにも関わらず、県大会での私の演奏はあまりよくなかった。誰にでもわかるようなミスをいくつかしたし、気持ちがのっていなかった。聞きにきてくれた姉が「練習の方が上手だった。今日は下手だった」と率直な感想をこぼして、母にたしなめられていた。姉の感想を聞いて少し凹んだが、確かに下手だったなと納得もした。

 それでも、県大会に出たのは、すごく貴重な体験だった。というのは、それまで何となく弾いていたエレクトーンにかなり真剣に取り組むことができて、エレクトーンや演奏についていろいろと考えるきっかけになったから。

 一つは、私は楽器を上手に弾くことにそれほど興味がないことがわかった。私にとって「幻想曲さくらさくら」は地区大会に出た時点で、間違わずに弾けるようになっている曲だったので、それ以上練習を続けるのは苦痛でしかなかった。私はエレクトーンの練習に飽きていた。楽器の才能がある人というのは、練習に飽きるというのを乗り越えて、演奏に自分なりの表現力を加えることができる人なんだろうと思う。

 それ以上に、エレクトーンという楽器の限界を何となく感じた。エレクトーンという楽器は、リズムや音色をあらかじめプログラミングしておいて、そのプログラムに従って演奏する楽器。Aメロの終りにフィルインが入って、音色が勝手に変わる。それに合わせて正確にキーを押していかないといけない。120のテンポにプログラムしたら、110のテンポで弾きしたくても120で弾かないといけない。プログラムからずれた音を弾くことが許されない。最初にプログラムしたのは私のはずなのだけど、弾いているうちに、私がエレクトーンにプログラムされているような気持ちに陥っていた。今考えると、この主体性の問題はもっと積極的にプログラムをしたり、編曲、作曲することができれば、解決できたんだろうなぁ。

 演奏技術の汎用性の低さも気になっていた。いくら上手にエレクトーンが弾けても、ピアノなど他の鍵盤楽器がからきし弾けないのだ。ピアノはタッチが大事なのに対し、エレクトーンの鍵盤は弱い力で押そうが強い力で押そうが同じ大きさの音が出る。音の大きさは右足のペダルで変えるからだ。一応タッチトーンという機能もあったけれど、それほど指の力が必要とされない。それに、私は一定のリズムで演奏するのが苦手だった。なぜなら、いつでもエレクトーンから流れてくるパーカッションに合わせて弾いていたから。便利であるがゆえに、技術力が培われなかったからだ。

 エレクトーンはそのあと2年ほど習ってやめた。直接的な理由は、中学生になり部活などで忙しくなったことなのだけれど、これ以上習っていても楽しく弾けないような気がしていたからだ。

 楽器を習うのは、生活の楽しみの幅を広げてくれる。それに、五線譜がよめると、学校の音楽の時間を苦痛を感じないで過ごせる。私は音痴であるにも関わらず、小学・中学と音楽の成績だけは良かった。平凡な子どもにとって、何か得意なものがあると思い込むことができるのは幸せなことだ。もし、バイエルから入るピアノを習っていたら、練習が嫌で、もっと早くやめていたかもしれない。でも、その一方で、やっぱりピアノを弾ける人が羨ましかったりする。ピアノの演奏技術の汎用性の高さ、楽器の構造のプリミティブさ、演奏者によって音色が変わる点、そういうことが羨ましい**。娘がそろそろ「ピアノを弾きたい」とか「ヴァイオリンを弾きたい」と言い出したので、何か楽器を習わせたいのだけれど、何を習わせるのかはまだ悩んでいる。

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*エレクトーンというのはYAMAHAの電子オルガンの登録商標。カワイではドリマトーンという名前らしい。でも、子どもの頃は一般名称だと思い込んでいた。エレクトーンのせいで、私はフルートはうるさい楽器だと思っていたし、ストリングスは何か変な音と思っていた。当時のサンプリング技術はそんなに高くなかったんだろう。そういえば、初音ミクなどのVOCALOID技術は、YAMAHAが開発したらしい。初音ミクの歌声を初めて聞いた時とかはちょっと衝撃的だった。ヴォーカルいなくても、ライブできるやんって。多分、生楽器のサンプリング技術も上がっているので、エレクトーンの音は良くなっているんだろう。

** 社会人になってからピアノを習い始めた。大人になるとバイエルをする目的がわかるので、とても楽しく練習できた。出産直前まで習っていたのだが、あんまりうまくならなかった。あぁ、こうやって書いていると、ピアノの練習がしたくなってきた。時間を見つけて弾こうっと。

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