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2009年8月29日 (土)

ぼくの話を聞いてくれ

 博士後期課程の学生にとって、非常勤講師は大変ありがたい仕事だ。研究に比較的近い事柄で生活費を得ることができるし、大事な教育実績にもなる。実績になるということは、履歴書に書くことができるということ以上に、経験を他のことに生かすことができるという意味で結構重要だと思う。

 で、ホイホイと気軽に講師の口を受けるのは良いことなのか、というとそうでもない。授業準備は結構時間がとられるんよな。しかも、適度に工夫しないと学生は全く聞いてくれないという非常に不幸な目に合うことになる。あまりにもつまらない話だと、真面目に受けようとしている学生でさえも寝かしつけることになってしまって、自己嫌悪に陥る。

 別に学生が聞いてくれなくても、すぐさま給料に影響することがないから気にしなくてもよいという人も稀にいるかもしれないが*、せっかく時間をかけて授業準備をしているのだから、話を聞いてほしいのが人の心というもの。だから、できる限り工夫をするのが建設的なやり方だと思う。

 というわけで、私がここ4年ほど集中講義の非常勤講師を通して効果的だと思えた工夫のいくつかを紹介。ごくごくありふれたやり方だけど、下記の工夫をすることで、少しは学生に授業に集中してもらえるように仕向けることができるようになったし、学生からも「わかりやすかった」とアンケートに書いてもらえるようになった(と書きつつも、授業内容に対して全く興味がない学生が、単位欲しさのためだけに来ていたら、打つ手はないような気がしている)。

1. 学生に対して質問をできるだけたくさん大量にする

 たとえば、写真や図を見せて、何を説明しようとしているのかを推測させたり、3択にして手を挙げさせたり、説明したことに対してどう思うかを聞いたりなど。質問はアドリブで行ってもよいけれど、前もって用意しておいた方が無難。質問をあてるのは、できるだけランダムにあてて、急に当たるかもしれないという緊張感を学生に持たせる。そして、大事なこととして、学生の回答を全否定するのを避けること。できるだけ、学生の回答を元に、違う視点を与えて、正解を導く。正解がないような質問をしているのであったら、学生の回答を認めた上で、講師の考えを述べる。

2. 教室中を歩き回る。

 最近の学生は私語がびっくりするぐらい多い。携帯電話で遊んだり、ゲーム機で遊んでいたりする学生もいる。こういう学生は、授業から出て行ってもらってもよいような気もするけれど**、きっと少しは興味があるから出席しているのだろうから、できるだけ授業を聞くように仕向けたい。で、こういう学生を注意するには、教室中を歩き回るのが手っ取り早い。私は授業でパワーポイントを使用することが多いので、こういうときパワーポイント操作機能付きのレーザーポインタがすごく便利。

3. 穴埋め式の資料を配布する

 通常であれば、ノートは自分で作るべきだと思う。それでも、積極性の薄い学生の場合、何も資料を配布しないと何もしなくていいと勘違いするみたい。それに、私は集中講義を担当しているのもあって、1日に3~4コマ授業する。真面目な学生でも1コマ目は真面目に聞いていても、3~4コマ目には疲れ始める。そこで、穴埋め式の資料を配布すると、学生たちは「とりあえず埋めなきゃ」という気持ちになるみたいなのと、作業量がそれほど多すぎないこともあって、せっせと作業する。作業すると眠気も少し薄らぐし、用語を穴埋めするためには集中して聞かないといけない。

4.写真を見せたり、物を見せる

 授業内容にもよると思うのだけど、私の授業は設計の基礎なので、説明を多く重ねるよりも、具体的な写真を見せたり、物を見せることが学生の理解を深める。だから、毎年できるだけたくさんの写真を見せるし、たくさんの物を持っていって、学生に触らせるようにしている。

5. 最後に簡単な振り返りテストをする

 授業内に出てきた内容を踏まえて、簡単なテストを行う。私は授業中に話した知識を確認する○×式の問題5問と、授業内容に関する記述式の問題を出すようにしている。○×式の問題は授業をちゃんと聞いてくれていたかどうかという確認で、記述式の問題は学生が授業内容を元に何を考えたのかを書かせるもの。この振り返りテストは採点に使う。正直なところ、授業料を払っているのは学生で、学生が授業から何か得ることができたのであれば、採点なんかしなくてもいいんじゃないかな、と思わないでもない。でも、学生さんには、長年の学校生活で培われた「真面目にやったらいい点をつけてほしい」という意識があるので、努力が報われるような明確な採点の基準を設けた方が無難だと思う。

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* 私が大学生の頃、といっても10年以上前になるのだけれど、当時は学生が授業を聞こうが聞くまいが興味がない先生方が多かった。学生の方をほとんど見ないまま黒板書きをひたする続ける先生、学生に聞こえないような小さい声でほそぼそと話す先生、テストさえできればいいから授業に来なくてよいという先生、授業時間30分で帰っちゃう先生、15回のうち6回しか授業しない先生などなど。当時の大学の先生の多くは、自分たちの仕事は「研究」であり、授業を行うのはついでの仕事と捉えていたせいかもしれない。それに、大学という場所は学びたい人間だけが学ぶことができる場所で、学ぶ気のない学生は学べない場所だったような気もする。それに比べると、今は授業に力を入れる先生は増えていて、大学は学生たちを学ばせようと頑張っているように思う。

**ある人(京都出身)は「授業よりも大事なことがあるんやったら、出て行ってもろてもかまへんよ」と言うそうな。私がこういうことを言うと、角が立つし、本当に学生が教室から出て行ってしまうような気がするんよな。気が小さいせいかも? はんなりとした京都弁をマスターすると、嫌みもさらっと言えるようになるかも?

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 下記は、私が授業内容を考える際に参考にした本とレーザーポインタ。以下の説明を書きながら、私はもう一回本を読み返すべきだと思った。

  • 授業評価に基づくティーチング技術アップ法:学生による授業評価アンケートを元に、学生が授業のどこを評価しているのかが整理されている。こちらの目次を見るだけでも参考になる。
  • 成長するティップス先生:ティップス先生が大学の授業を通して成長していく日記。小さい小さい失敗もたくさん書いてあって、授業をしたことがある人なら読みながら「あるあるあるある…」と言いたくなる。
  • KOKUYOレーザーポインタ:パソコンに受信部をUSBポートに差し込むだけで、すぐに使うことができる。受信可能距離は半径10mと広いので、80人ぐらい入る教室でも使える。レーザーの色は赤色のものよりも緑色の方が格段に値段が高い。緑色の方が赤色の8倍も明るく見えて視認性が良いらしい。(高価なものなので、私は研究室で借りています)

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