土木への愛をうちあけよう
あ~いして~る~の響きだけで、強くなれる気がしたよ(from チェリー@スピッツ)。
三十路を越えて、恥も外聞もなくなってきたので、「土木を愛してる」なんて臆面もなく語ってしまう自分がいるのだけれど、私は土木のことを何にもわかっていない。私の土木LOVEの始まりは、センター試験直後にテレビで阪神大震災の映像を見て、「土木技術は生活を支えている」と単純に思ったこと。今もその思いはあまり変わらない。
でも、私は土木技術者としてのセンスが足りない。学部生時代、三力学が苦手だった。三力学とは、構造力学、水理学、土質力学。だいたい、高校時代でさえも、物理で赤点すれすれの点しかとっていなかったのだから仕方がない。力学ぐらい、勉強すればできるようになるさ、というのはただの思い込みだった。力学のセンスがなくて、いずれもギリギリの点数で単位をとったように思う。
そういう力学がわかっていない土木学生はどうするのかというと、交通計画系の研究室にもぐりこむのである。うちの研究室に来る人間は二つのタイプしかいない。力学(構造、水理、土質)もできるけど交通が好きであえて交通にきた人間と、力学が不得意で交通以外の研究室では生きていけない人間。私はもちろん後者だ(えへん)←いばってどうする。
先日、助教の先生が2年生の個人面談をしていた*。ついつい盗み聞きしてしまって(だって、真後ろで話しているんだもん)、いや泣けたっす、まじ泣けたっす、ネガティブ具合にマジ泣けたっす。
曰く、「建築に行きたかったのに、点数が足りなくて土木にきた」、「土木の授業に興味が持てない」、「将来土木の仕事に就きたくない」などなど。昔は大学入学の時点で学科が振り分けられていたので、覚悟を決めて大学に入るしかないのだけれど、今は2年生になってから振り分ける。建築にいくつもりで入学してきて、その期待を1年間あたためてきたのに、ちょっとした点差で土木にきてしまうというのはかわいそうといえば、かわいそう。でも、土木だって面白いのに…。土木の仕事、良い仕事よ。
ごくまれに、建築への夢があきらめきれずに建築の授業にもぐりに行ったり、専門学校に通ったりする学生がいる。それも一つの道だと思うし、積極さは評価されていいと思うのだけど、土木の中に楽しさを見出す方が視野が広がって面白いんじゃないのかなぁ。「建築マインドも理解できるドボク技術者」ってことで、やっていけばいいじゃん。
というわけで、土木への愛をかきたてるようなwebページを集めてみた**。
- 日本ジャンクション公団: ジャンクションの構造物としての美しさを感じ取れる。曲線の美しさ。そしてこの曲線を図面上だけでなく、実体化できるという技術の素晴らしさ。
- 布引五本松ダム: 日本最初の重力式コンクリートダム。意匠も美しい。飲料水の不足、コレラの蔓延などの問題を解決するべくして作られた。布引ダムは、景勝地としても有名で、一年中ハイキング客でにぎわっている。詳しくはこちら→建設コンサルタンツ協会誌237号「日本初のコンクリートダム「布引ダム」
- PORTRAM: 日本最初の本格的なLRT。富山は車の依存度がかなり高い都市であるので、少し前までLRTが入るなんて考えられなかった。富山市は、LRTだけでなく、コミュニティバスや住民参加型のバスを支援するなど面的な交通体系の整理をしている。他にも公共交通の路線沿線居住を進める政策をしたり、住宅政策との連携もしている。
- 醍醐コミュニティバス: 「みんなで支えてバスを便利に!」というコンセプトはわかりやすくても、なかなかうまく進まない。醍醐コミュニティバスはそれを実現化していることに、価値がある。ルート上には、醍醐寺などの見どころも多いので、住民以外の人が乗っても楽しそう。
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* 先生との個人面談、問題のある学生だけでなく、全員を対象にしてやっているみたい。私が学部生の頃はなかった。単位の取得状況や生活のことなどを聞いていた。多分、留年する人や退学者を減らすためだったり、犯罪を防いだり、NEETになるのを防いだりという目的なんだと思う。
でも、もう大学生っていい大人なんだから放っといてええんちゃう?あかんのかなぁ。私だったら必要最低限しか答えない。「何でそんなこと 先生に聞かれなあかんの?」と反発して、感じ悪いオーラだしそう。なくてよかった。
** 土木への愛をかきたてるものって結構探すのが難しい。構造物として美しかったとしても、社会的費用がかかりすぎているものは、おススメできない気がする。よく知らないせいもある。たとえば、明石海峡大橋は美しいと思うのだけど、本州と四国を結ぶ橋が本当に3本も必要だったのか?という疑問もあるし、ストロー効果による四国の経済の衰えも見逃せない。
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コメント
布引五本松ダムなんて知らなかったです。
それも、新神戸から近い六甲山系に!
富山の"PORTRAM"は私も注目しているのですが、
青森のようにどんどんお年寄りを駅前に招致する方向に
なるんでしょうか?
投稿: neuroeco from Twitter | 2009年10月18日 (日) 13時30分
neuroecoさん、こんにちは。
布引五本松ダムは楽しいですよ。
ロープウェイで登って、降りながら見れば、体力もあんまり使わずに、気軽に見学できます。
青森の事例は知りませんでした。
富山市長は公約として公共交通を中心においた都市づくりを挙げていると聞きました。
地方都市の方が、しがらみが少ないし、都市の規模も小さいので、面白いまちづくりをすすめやすいのかもしれないな、と思って注目しています。
土木遺産という言葉ができて、土木学会でも毎年選定しています。http://www.jsce.or.jp/committee/doboku-isan/index.htm
でも、このページを見ても、写真がまずよくないし、選定理由もよくわからない。どの部分がすぐれているのか、素人にもわかるように書いてほしいような気がします。
土木に携わる人たちはアピールが下手です。これも、建築にばかり学生をとられている原因の一つかなぁ、と思います。
投稿: ぴか | 2009年10月18日 (日) 22時49分