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2010年12月13日 (月)

土木技術者として卵の側にたちたい

「高くて、固い壁があり、それにぶつかって壊れる卵があるとしたら、私は常に卵側に立つ」ということです。
 そうなんです。その壁がいくら正しく、卵が正しくないとしても、私は卵サイドに立ちます。他の誰かが、何が正しく、正しくないかを決めることになるでしょう。おそらく時や歴史というものが。しかし、もしどのような理由であれ、壁側に立って作品を書く小説家がいたら、その作品にいかなる価値を見い出せるのでしょうか?
エルサレム賞での村上春樹氏のスピーチより)

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(ちょっと書きなぐってるような文章なので、細かいところで事実と反するところ、不正確なところがあると思います)

 私の肩書きは相変わらず曖昧なままだけども。それでも、私は、自分のことを土木技術者だと思っている。私のものの考え方は、土木工学として教えられたものに大きく影響を受けている。

 私の今の職場の一つは、大気汚染訴訟の賠償金の一部をもとに作られた。大気汚染訴訟の原告は、喘息患者達。そして、訴訟相手は、いくつかの企業、道路管理者。原告は、道路管理者との和解の際に、道路の沿道環境の改善とひきかえに多額の賠償金を放棄した。

 沿道環境改善に原告の意見を反映するために、会議が開かれている。この会議は定期的に開かれている。100人近くの原告が傍聴し、道路管理者側も20人以上出席する大きな会議。先日、初めて出席したのだけれども、形骸化している会議に本当にがっかりした。道路管理者側の担当者のやる気のなさ、なおざりな態度に、同じ土木技術者として本当にうんざりしてしまった。

 どうしてこんなことになってしまったのだろう?

 一つは、しくみがないということ。訴訟の和解条項に基づいて開かれている会議とはいえ、道路施策の中で位置づけられているものではない。この会議で出た意見を、道路管理者が施策に反映する義務は何もない。パブリックコメント等と違い、意見に対する返答を公開する義務も無い。

 そして、最大の理由は、土木技術者の姿勢かと。不況の今であっても、最大多数の幸福を目指そうとすると、自動車ユーザの移動円滑を目指した方が効果が高い。非力な少数の人たちの立場にたった施策は全体の幸福にそれほど寄与しないから*。

 たとえば、沿道の環境対策のために、横断歩道を撤去して、自動車交通をスムーズに流すとかいうのが普通に行われてしまう。どうして横断歩道の撤去が、道路沿道環境の改善になるんだろう? どうして歩行者が道路のこちらからあちらにいくだけなのに、いちいち階段を上り下りさせるのを、ベストな選択とすることができるんだろう?

 私は、こういう卵をたたきわるような仕事はしたくない。そんなこと言っているから、いつまでたっても一人前になれていないのかもしれないけど。なんか前に進んでいないのかもしれないけれど、私はいつでも卵の側にたつ仕事がしたい。

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 えっと。公害訴訟について。多くの被害者は、何の罪もないのに、健康被害を受け、普通の生活を粉々にされる。その生活を少しでも取り戻したいという必死の思いのもと、大企業や行政を相手取って訴訟を起こす。一般市民にとって訴訟を起こすというのは困難なことだ。訴訟相手に非があるという証拠を原告側がそろえなければならないが、公害訴訟の場合、原告側は何の力もない一般市民だったりする。そして、訴訟は、時間やお金、労力がかかるだけではなくて、大きな差別を生む。「あの人たちはお金がほしいから、病気のふりをして(あるいは、健康被害を大げさに捉えて)訴訟を起こすのだろう」といった誹謗・中傷だ。

 ひどく嫌な感情だと思うが、誰もが正しい情報や知識を持っているわけではないし、常に正しい判断をできるというわけでもない。私も差別する側に立ちうるだろうし、気がつかないうちに、壁の一部となって、卵を割っているかもしれない。

だから、私は何度でも自分の立ち位置を確認する。壁になってないか、卵を抑圧してないか、何度でも確認する。私は、私ができるやり方で、卵の側にたつ土木技術者でありたい。

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 なんか書いてみたら、浅い。浅すぎる。私の思いってこんな上っ面なものなの? いろんなことをわかってないし、決意が足りていない。でも、こういうことをちゃんと考えていこうと決意表明として、書き留めておく。
* 特に、ここらへんの"何を正義とするのか"ということに関しては、もっとちゃんと勉強したい。

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