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2012年11月 9日 (金)

神戸は特別な街だと思う

少し前に、神戸の中心部の商店街の方にヒアリング調査に行った。その方は、商店街組織の長をされている方なのだけれど、とても話好きな方で、面白いお話をたくさんしてくださった。

調査の内容はここでは詳しく書けないのだが、ヒアリング調査の内容は、主に道と賑わいに関するもの。神戸市では、商店街とさまざまな協定を結んでいる。それらの協定は、商店街の方の意識が高いからうまくいっているということがよくわかった。儲けたいではなく賑わいを作りたい、神戸らしい素敵な商店街にしたいという姿勢がすごくよかった。

ルミナリエについても話をうかがった。ルミナリエは、阪神大震災の鎮魂のために始まったもので、毎年たくさんの方が訪れている。だが、交通警備が強すぎて誘導経路から外れることができないため、ルミナリエだけ見て神戸の街をまったく見ないで帰っていってしまう人も多いらしい。神戸は散策するのが楽しい街なのに、ルミナリエを見るためだけに観光バスで乗り付けてきて、街をみないで帰ってしまうのは神戸の楽しさを分かっていない。そういうイベントの開催の仕方や観光客の姿勢は、街を廃らせてしまう。

お話してくれた方は家具屋さんを経営されていて、本業のお話も興味深かった。元々、居留地に住んでいた外国人の家具の修理から始まったお店らしく、創業から140年がたっている。輸入家具ではなく、すべて国内の木材を使った国産の家具で、洋風の家具なのに日本人の生活に調和している。神戸にはここの家具のファンが多いらしく、嫁入り道具をここで揃えるのは自慢になるのだとか。

どの家具も素敵だったのだけど、オーダーメイドの椅子が特に魅力的だった。日本では、椅子というと、応接間の椅子のように誰でも座ることができる椅子ばかりが作られてきていて、ある個人しか使わない椅子は ほとんど作られてこなかった。ここ10年くらい、個人のための椅子にニーズが出てきたらしい。特に、身体の小さな女の人が楽な姿勢で読書をするような椅子に対するニーズが大きいらしい。サンプルとして置いてあるものに座らせていただいたのだが、座面が程よい固さで、背もたれもふんわりしているし、肘掛けには窪みがあって、座りやすかった。これが自分のサイズにあったものだったらさらに座りやすくなるんだろう。

今回の調査で、神戸は、他の街と違って、西洋文化がこなれた形で根付いている街だというのを改めて感じた。

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神戸は素敵な街だ。異人館をはじめ洋風建築が似合う街。パン、洋菓子をはじめ洋風料理が美味しい街。六甲山がすぐそこに迫っているため坂が多く、魅力的な景観を作っている。神戸はファッションの街でもある。私は大学生の頃神戸の古着屋に何度か行った。アメ村とかに比べるときれい目の上品な古着が多くて大好きだった。女子高生の持ち歩くファミリアの手提げ鞄、フリルなどをふんだんに使ったフェミニンなファッションの女子大生たちなど神戸独特のファッションを見るのも好きだ。神戸の人たちの「神戸大好き!」という地元愛も羨ましい。

神戸の魅力を感じることができる漫画として、「神戸在住」という漫画がある。昨年、友人に紹介されて読んだ。

この漫画は、神戸の美大に通う女子大生の桂が主人公で、彼女の日常生活を通して神戸の都市としての魅力が描かれている。

桂はもともとは東京の育ちで、大学入学と同時に神戸にきた。桂の神戸に対する視線はとても繊細だ。その繊細さは、次のような台詞の中によく表れていると思う。"ふるさとは東京。我が家は神戸" "街の空気に馴染むという事は そこに幸せな人間関係を作る事なのかもしれない"

桂は毒がない"良い子"なので、基本的に話はまったりとすすんでいく。それでも、何でもない日常に、阪神大震災は影を落としている。神戸は阪神大震災をふまえないと語れない土地だというのに、たびたび気づかされる。

3巻は、林君の避難所ボランティアの話。災害ボランティアというのが、当時は一般的ではなかった。個人の裁量に多くのことが任され、役所の対応は後手後手にまわっていた。漫画でこの手のことを描かれるのは稀だと思う。たんたんとした筆致で、しろっぽいあっさりとした絵で描かれている。

私もこの主人公と同じように、阪神大震災の後に関西にきた。当事者じゃない私は震災について語るべきじゃなかったし、神戸の人達に震災について話題をふることは怖くてできなかった。

私は、神戸に対してずっと距離をとってきた。それは阪神大震災や災害復興とも距離をとってきたということでもある。東日本大震災にとはさらに距離がある。災害にどう対峙するのかというのは、私の仕事や研究においても、私的な領域においても、重要な課題になってきている。今後、よくよく考えていきたい。

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