北山の茶室住宅の話6-七輪パーティ-
北山の茶室住宅に住んでいた頃、週末にはよく七輪パーティをした。
炭を起こすのも、手慣れたものだった。茶道部で教えてもらった通りに、コンロで炭を起こして、炭が半分ぐらいまで赤くなったら台十能に載せて七輪まで運ぶ。で、七輪に自転車の空気入れで空気を入れるとすごく早く火がついた。
七輪の素晴らしいところは、何を焼いてもおいしくて、失敗しないところ。お肉やお魚、野菜、なんでも焼いた。焼く食材は必ずしも高い物である必要は無くて、シシャモ(という名で売っているカラフトシシャモ)とかオクラとか安い物もおいしかった。オクラの炭火焼は本当に意外な程おいしくて、塩をかけて焼いたあと、絞ったすだちをかけて食べるのだ。焼きおにぎりもおいしかったな。紅茶の葉っぱを使って燻製もやってみたけど、おいしかったなー。
人が遊びに来た時にもよく七輪パーティをしたけれど、オットと二人でチマチマとよくやった。晴れた日には月夜を愛でながら、雨の日でさえも雨の滴が落ちるのを眺めながら。オットは興に乗ると、ノコギリを取り出して弾いたりもしていた。怪談話で有名な深泥池の近くだったので、通りがかった人にはノコギリの音がきっと薄気味悪く聞こえただろうけれど。七輪パーティをする日は、夕方の5時頃からいそいそと用意して、11時過ぎまで、炭が朽ちるまで、二人でダラダラと愚にもつかぬことを話し合った(何を話し合ったのか、ひとつも覚えていない)。七輪の何がいいかっていうと、ちょっとずつしか焼けないので、必然的に時間がかかるところ。少しずつ自分が食べたい物を焼きながら、炭火を確かめながら、食材を焼けるのを待ってゆっくり食べる。バーベキューコンロだとこうはいかない。本当に懐かしい、豊かな日々。
今の団地の物置には、七輪と台十能が所在なさげに4年間の日々を無為に過ごしている。時折、七輪パーティの名残で、ベランダにゴザをひいて、外を見ながらご飯を食べる。茶室住宅の七輪パーティに比べると格段に雰囲気は落ちるけれど、それでも少し楽しい。あ-、こうやって書いていると、だんだん北山の茶室住宅に帰りたくなってきた。まだ空き家なんだろうか?茶室住宅に住んでいたのはほんの一瞬だったのに、今の生活の方がいまだに仮の宿りな気がしてならない。
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写真は庭にあった灯籠。この庭には灯籠が4つあった。気がむくと灯籠の中に蝋燭を付けたりしていたけれど、だいたいの日は暗いまま。目の悪い私は、人が立っているのと間違えて、「どなたさまですか?」と何回か灯籠に話しかけたことがある。